13.

16/18
前へ
/782ページ
次へ
先に目を逸らしたのは平山の方だった。 彼は視線を芹沢にやり、一礼すると私をもう一度睨みつけてから裏口の方へ歩き出した。 そんな彼を、芹沢派の一人であろう、長身で髭の生えた男が急いで後を追った。 残ったのは、私に芹沢、新見、そしてもう一人の芹沢派の男だ。 私は平山が姿を消すと、なにも言わずに部屋へ戻ろうとした。 新撰組の役に立ちたいとは言ったが、どうしても彼ら芹沢派には壁を作ってしまう。 それもこれも、あの夜の出来事が原因なのだが。 「待ってよ、異人さん」 歩き出そうと一歩を踏み出したところで、着物の袖を強く引かれた。 予想だにしていなかった力に、危うく後ろへ倒れるところだったが、なんとか踏みとどまった。 そして犯人を睨むように振り返れば、そこには平山と同じくらいの身長で、坊主頭の男がいた。 坊主といっても、お坊さんとかではなく……そう、野球少年のような坊主だ。 日に焼けた肌も、それっぽい。 その男は残りの芹沢派の男であり、いまだに袖を掴んだままで、きらきらした瞳で私を見ていた。 「……オレは異人じゃない」 「じゃあ、異人紛いさん?」 「…………」 小首を傾げて言う様は、なんとも可愛らしく、おそらく彼はマダムキラー。 姉御肌の女の子にはもってこいの男だろう!……などと、変な方向へ思考が飛んでしまうほど、彼の発言は失礼なものだった。 しかし、これを失礼なものだと彼は感じていないようで、いまだにじっと私を見つめてくる。 つまり、彼は天然君。
/782ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3491人が本棚に入れています
本棚に追加