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「野口、そいつを引き止めてどうするつもりだ?」
「芹沢先生。この人は風月亭のあの異人さんなんですよね?僕、一目見た時から彼と話してみたかったんです!」
「ほう、なぜ?」
「異文化が知りたいからです!」
男──野口は、きらきらした目で芹沢に言った。
傍から見たら、まるで小学生と教師の図だ。
芹沢は野口に優しく微笑みかけ、「そうか」と頷いていた。
その後ろにいる新見は完全に先ほどの怒りは消え失せ、興味なさそうにそれを眺めていた。
……いや、少し呆れているように見える。
──……って、異文化知りたいと言われても、オレは日本人だし!いや、前の世界での文化は一応異文化か…………。
野口の発言に、今さら心の中でツッコミをしていれば、袖をぐんっと引っ張られた。
再び転びそうになるが堪え、引っ張っている張本人はその力を維持したままどこかへ歩き出していた。
必然的に、私もその後についていく形になる。
「おい、どこに連れてくつもりだ」
「えっ、どこって……もちろん八木邸に」
「ヤダ。離せ」
「やだ。僕は君から異文化を聞くんだ」
「オレは日本人だ。異文化もなにもない」
「……そうなの?」
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