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「望月(ミツキ)~!!」 イチョウの葉がひらひらと舞い落ちる夕暮れ時の大学構内に、その声はよく響いた。 私は足を止め後ろを振り返った。 周りにいた人達も同じように足を止めて後ろを見た。 そこには小走りでこちらに向かっている女の子がいた。 雰囲気はふわふわとしており、守ってあげたいと思わせる風貌だ。 これが可愛いという類なのだろう。 周りにいる数人の男達は目を輝かせてその女の子を見ていた。 「陽菜(ヒナ)、どうかしたのか?」 「うん、いつもの」 「ああ、ちょっとこっちに行こうか」 私の下まで走り寄ってきた彼女──陽菜に声をかければ、彼女はカバンの中から一冊の本を取り出した。 躊躇いなく取り出されたそれを一度彼女のカバンへ戻し、私は周りの人達を気にかけることなくイチョウ並木の端へ彼女を導いた。 普段は二人の時に交わされるこの会話を、周りの者に知られたくなかった。 「ここならいいかな。それで、今回はどんなの?」 「うん、これなんだけどね。この前のは内容が濃いものだったから今回は全体を理解しやすいものにしてみました」 「全体を理解ねぇ……。なるほど、これはよく理解できそうだ」
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