13.

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「はい、そうなの。だからlet go of me(私から手を離せ)」 「??今のって……メリケン語?」 「だったら?」 「じゃあ、メリケン語教えて」 「はあ?!」 私への興味も失せ、ようやく袖から手を離してくれるかと思いきや、野口は再びしっかり掴むと、先ほどよりも強い力で私を引いた。 完全に引きずられる形となり、私は自分の言動に後悔した。 癖になっていた英語もぬけていたというのに、なぜこんな時に言ってしまったのか……。 ふと、野口は私を八木邸に連れて行きたいようだが、そこの主であろう芹沢はどうなのだろう。 もちろん、嫌なんだろうと決めつけ、なんとか野口の力に抵抗して立ち止まると振り返った。 「ねえ、こんな奴普通家に上げたくないだろ?あんたもこいつになんか言ってやってよ」 「……そうだな、わしもその異人と話したかったところだ。野口、そいつをわしの部屋に連れて行け」 「はい、芹沢先生」 芹沢からの許しと命令が出たところで、野口の力はさらに強まった。 なんとか抵抗していた私の力は呆気なく負け、先ほどよりも酷い体勢で引きずられることとなった。 この男、野球少年という見た目通りに腕力があるのか?!と必死にもがきながら思った。 ちらりと後ろを見れば、私を逃がすまいと、少し距離をあけて芹沢が悠々と歩いていた。 その後ろには、呆れた顔でため息をつく新見の姿もあった。 この状況に、私は逃げ出せないことを確信した。
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