3488人が本棚に入れています
本棚に追加
/782ページ
「one two three(1、2、3)」
「one two three」
「four five six(4、5、6)」
「four five……すくす?」
「six」
「six」
「ああ、そんな感じ。野口さん、なかなか上手いよ」
「そうかな?ありがとう。それよりも、健司でいいって言ってるじゃんか、朔」
「…………ところで野口さん、オレはいったいいつまでここにいればいいんだ?」
「健司でいいって言ってるのに……」
私の質問に、目の前にいる野口は膨れっ面をみせてそう言った。
いや、質問に答えてくれないだろうか……と本気で思ったが、この天然が相手では、それが容易じゃないことは簡単に想像できる。
先ほどの質問のことなどもう忘れたようで、いや、これは気にもしていないようで、続きを促してきた。
私は深くため息をつくと、仕方なく英語を口に出した。
あれから、私は芹沢の自室へ通された……ようだ。
部屋の隅には徳利が数本並び、酒の臭いが充満していた。
入った途端思わず噎せ返り、他人の部屋ではあるが、急いで真向かいの障子を開けた。
その先には中庭が広がっており、じめっとした風が入り込んだが、その時はその風さえもとても心地よく感じた。
それほどまでに、芹沢の部屋は酒臭かった。
危うく、酔ってしまうところだった。
それから野口に引っ張られて畳の上に座り、さっそく英会話の授業となった。
部屋の主である芹沢は一度部屋に顔を出し、どこかへ消えた。
トイレか?と気にせず野口にかまってやったが、いつまで経っても帰ってこない。
そろそろ昼ご飯の時間なのではないかと、開け放された障子から空を見上げれば、お天道様は真上に位置していた。
──オレと話したかったんじゃないのか?!
最初のコメントを投稿しよう!