13-(2).

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「one two three(1、2、3)」 「one two three」 「four five six(4、5、6)」 「four five……すくす?」 「six」 「six」 「ああ、そんな感じ。野口さん、なかなか上手いよ」 「そうかな?ありがとう。それよりも、健司でいいって言ってるじゃんか、朔」 「…………ところで野口さん、オレはいったいいつまでここにいればいいんだ?」 「健司でいいって言ってるのに……」 私の質問に、目の前にいる野口は膨れっ面をみせてそう言った。 いや、質問に答えてくれないだろうか……と本気で思ったが、この天然が相手では、それが容易じゃないことは簡単に想像できる。 先ほどの質問のことなどもう忘れたようで、いや、これは気にもしていないようで、続きを促してきた。 私は深くため息をつくと、仕方なく英語を口に出した。 あれから、私は芹沢の自室へ通された……ようだ。 部屋の隅には徳利が数本並び、酒の臭いが充満していた。 入った途端思わず噎せ返り、他人の部屋ではあるが、急いで真向かいの障子を開けた。 その先には中庭が広がっており、じめっとした風が入り込んだが、その時はその風さえもとても心地よく感じた。 それほどまでに、芹沢の部屋は酒臭かった。 危うく、酔ってしまうところだった。 それから野口に引っ張られて畳の上に座り、さっそく英会話の授業となった。 部屋の主である芹沢は一度部屋に顔を出し、どこかへ消えた。 トイレか?と気にせず野口にかまってやったが、いつまで経っても帰ってこない。 そろそろ昼ご飯の時間なのではないかと、開け放された障子から空を見上げれば、お天道様は真上に位置していた。 ──オレと話したかったんじゃないのか?!
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