14.

3/18
3488人が本棚に入れています
本棚に追加
/782ページ
土方は眉間のしわをより一層深くした。 よっぽど、今回の命令に納得していないようだ。 昼食を普段通りに終え、余り物を狙いにやって来た永倉と、それに巻き込まれた藤堂が部屋に居座ってから数分。 苛立ちを抑えきれていない足音が聞こえてきた。 その音にいち早く反応したのは永倉で、彼は口に含めるだけ食物を含むと、藤堂を放って逃げ出した。 藤堂も、そんな彼の様子を見て事態を察知したのか、もしくは私と二人になるのが怖いのか、同じように逃げていった。 彼らの行動に首を傾げていれば、その原因であろう人が部屋にやってきた。 開け放された襖から差し込む光が遮られ、影ができた。 目線を上に上げると、いつもよりも眉間のしわが深い土方がおり、その後ろには相変わらずにこにこした沖田がいた。 いつも私を邪険に扱う彼が、私の部屋を訪ねたということは……ついに医師の出番か!と思ったが、焦った感じはなく、そんな風ではなさそうだ。 彼らはずかずかと部屋に入り込み、土方は上座にどかっと座った。 沖田は襖に凭れるように私の背後に座り、私は訝しむ目で土方を見た。 明らかに、様子がおかしい。 不安を感じつつも、食器を廊下に置くと、土方の目の前に再び腰を下ろした。 そして、単刀直入にああ言われ、現在に至っている。 ──なんで突然、小姓なんかに……。 土方同様、芹沢の思考が読めずに私も唸った。 先ほどもはっきりと言ったが、私は小姓になりたくない。 正確に言えば、芹沢派の小姓に、だ。 もしなってしまったら、八木邸へ毎日のように通い、嫌でも平山と顔を合わせなければならない。 そんなの御免だ。
/782ページ

最初のコメントを投稿しよう!