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「組の大将でも、そんな独断で決めれるのか?あんたは嫌なんだろ。だったら反論すればいいじゃんか」
「だめですよ、朔君。土方さんをいじめちゃ。土方さんはこう見えて小心者なんですから」
「誰が小心者だと、総司。邪魔すんなら出てけ」
「わかりましたよ、静かにしてます。それで、土方さんは反論したんですか?」
「あたりめぇだろ。それらしい理由付けて止めろと言った」
「で?」
「気に入ったから小姓にする、の一点張りだ。それに、筆頭局長の命令は簡単に無視できねぇんだよ」
土方はより一層眉間のしわを深くした。
その時のことを思い出したのか、瞳が鋭くなっている。
人一人殺せそうだ。
──縦社会って、面倒だな。
実力主義の世界でしか生きてきたことがないので、どうにも縦社会を理解できない。
実力主義と言っても、結局は親の七光りであるのだが。
私も前の世界でのことを思い出し、顔をしかめた。
すると、不思議そうに沖田が横から覗き込んできた。
「どうされました、朔君。土方さんみたいなしわが寄ってますよ」
「いや、なんでもない」
意識しているのかいないのか、その美しい顔が妙に近く、私は彼と距離を空けるようにして少し横にずれた。
沖田はそのまま私の隣に居座り、いまだにこちらを見てくる。
「なんだよ」
「いえ、芹沢さんはいったいどこを気に入ったのかなと思いまして」
「そんなの本人に訊きなよ。オレだって……」
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