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「本日付けで、芹沢筆頭局長の小姓となります、朔です」
「挨拶はいい。それで、なぜ沖田も一緒だ?」
「土方副長より、彼をよろしくお願いします、という言葉を承り、それをお伝えしに来たんです」
「念押しのつもりか」
「その解釈は芹沢さんにお任せします。僕はただ、土方さんに言われたことをお伝えしたまでです」
「相変わらず、生意気な餓鬼だ。土方も貴様も」
「一緒にしないでください」
沖田はにっこり笑顔のまま、そう言った。
その笑顔がとても黒く、隣に座っていた私は彼から一歩身を引きたかった。
しかし、目の前の芹沢と沖田の間にあるなにかが、体を動かせなくしていた。
背筋には悪寒が走った。
「まあよい。沖田、貴様はそれを伝えに来ただけか?」
「はい。朔君のように、芹沢さんの小姓にはなりませんよ。そんなの御免です」
「それはわしの方からお断りだ」
芹沢は大層嫌そうな面持ちで、沖田を見た。
若干、顔色が悪くなっているようにも見える。
体調を悪くしてしまいそうなほど、沖田のことが嫌い──いや、これは苦手なのだろうか?
一方の沖田は、相変わらずの黒い笑みを満面に出していた。
それほど芹沢のことが嫌いなのだろうか。
室内は静寂に包まれた。
沖田は野口が出してくれたお茶をのんびりと啜り、目の前の芹沢も同様に茶を啜っていた。
私たちの背後に座る新見は鋭い視線を沖田に注ぎ、私はというと、誰でもいいから喋ってくれと願っていた。
この妙に重い空気が嫌でたまらない。
すると、天が願いを聞き入れてくれたのか、新見が刺々しい口調で話し出した。
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