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「沖田、貴様の役目はすでに終わっているはずだ。さっさと前川邸へ戻れ」
「お茶を出してくださった方のご好意を、無駄にしないようにと思っていたのですが……それもさせてくれないんですか、新見さん?」
「貴様はそんな気の利く男じゃないだろ。なにが目的だ」
「酷い言われようですね。ですが……お言葉に甘えて訊きます。朔君のどこを気に入られたんですか、芹沢さん」
沖田は新見から芹沢に視線を移した。
芹沢はその質問が来るとわかっていたのか、手にしていた湯飲みを静かに置き、落ち着いた面持ちでただ一言、答えた。
「貴様に関係ないだろう」
「……それもそうですね。それでは、僕は失礼します」
沖田はお茶を飲み干すことなく、すっと立ち上がると私を見下ろしてきた。
その目はいつもと違って冷たく、ただ少し、なにかに納得したようだった。
首を傾げればいつもの笑顔の彼に戻り、沖田はそのまま襖へ向かった。
「沖田、土方に一つ伝言だ。条件は守る。ただ、時間を制約しなかったのは間違いだな、と」
「それは…………どういう意味ですか」
「小さい奴は女子の代わりになる……と言えば、通じるか?」
にやりと妖しく口を歪めた芹沢の発言に、皆が首を傾げた。
その謎々にいち早く答えを出したのは新見で、彼は信じられない、といった表情で芹沢を見た。
しかしなにかを悟ったのか、呆れたため息をつくだけでなにも言わなかった。
私はそんな彼の様子を見ていたがなにも解らず、次に沖田を見てみた。
彼もいまだに理解していなかったが、私を見据えて数秒後、顔はかあっと赤くなり、キッと芹沢を睨みつけた。
その反応に、芹沢は愉快そうに笑った。
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