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陽菜のカバンから取り出された本を受け取り、タイトルを見て納得した。
THE幕末。なんて大雑把でわかりやすいのだろう。
その本を受け取って彼女を見れば、相変わらず嬉しそうににこにこと笑みを浮かべていた。
「ありがとう。あっ、ちょうど借りてた本を持ってるから返すよ。一通り読んで記憶はしたけど、陽菜は相変わらず新撰組が好きなんだな。
本にあれだけ自分の感想書き込める奴はそうそういないぞ」
「えっ、あの本の内容解ったの?!」
「“記憶”はした。理解はこれからしていくよ」
「うんうん。順調に望月が幕末に染まっていって私は嬉しいよ。ぜひとも今年の冬は京都へ行こう」
「それは何より。京都旅行は考えておこう。そんなことより、いいのか? 木下教授と待ち合わせてるんじゃないのか?」
「あっ。さすが望月、私のスケジュール管理完璧だね」
「そろそろ自分でしろ」
そう言って私は陽菜の額に軽くデコピンをかました。
いたーっ、と言って大袈裟に額を押さえる彼女の姿に小さく笑うとタイミング良く彼女の携帯の着信が鳴った。
ディスプレイには木下の名前が表示されていた。
「ほら、呼ばれてるぞ。待ち合わせ時間は確か十七時。で、今はもう十七時十五分」
「あらー、十五分も遅刻だ」
「のんびりしてないでさっさと行けよ」
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