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「なぜ怖がる必要があるのですか? 初めてお目にした時は驚きましたが……困っている人を助けてくださる方に怖い人はおりません」 「あんたって……見た目に反してかなりの大物だね。むしろstrange(変)」 「すと……? あの、つかぬことをお伺いするのですが、あなたは異国の方なのですか?」 「異人さんがこんなにも流暢に日本語を喋ると思うか?」 女の質問に私は質問で返した。 女は口を閉じてしばらく考えていたようだが、私と再び目を合わせれば首を横に振った。 「つまりオレは日本人。まあ、英語……じゃなくて、ここではメリケン語だっけ? ただその言葉が喋れるってだけ。それじゃ、また絡まれないように気をつけて帰りなよ」 私は片手を上げて軽く手を振り、なんの違和感もなしにこの場を去ろうとしたが、女は彼女自身が言っていた言葉を忘れてはいなかったようだ。 彼女は私の服の袖をしっかりと掴むと、満面の笑みで「どこに行かれるのですか?」と訊ねてきた。 顔は笑っているのに口調はとても刺々しく、その差に私は口元を引きつらせた。 これはもう逃げられない。 「お礼をさせていただくまで、この手はお離しいたしませんよ」 「……わかった、ありがたくお礼してもらうから」 「ありがとうございます。それでは、私の家にご案内しますね。そこで丁重におもてなしさせていただきます」 「わかった。それで、あんたの家ってどこ?」 「町の方です」 「町って……あのさ、こんな格好の奴と一緒に歩くのは、あんたにとって良くないとオレは思うんだけど」 「私は気にしません。ですが……もしその見目をお気になさるのでしたら、これをお使いください」 女はそう言って手に持っていた風呂敷を開き、その状態で私に渡してきた。 私はそれを素直に受け取った。 風呂敷の中にあったのは男物の着物だった。 私は女のある勘違いに気がつきつつも、それをあえて口に出すことはなく、ただ彼女を見た。
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