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「あー……すごい視線を感じる。Everyone is unreservedly staring me(遠慮なくオレのこと見てくるし)……」
「あん……すて……? 朔様不思議な言葉を話されますね。それがメリケン語なのですか?」
「はい、そうだよ。鈴はメリケン語に興味あるのか?」
「興味ですか……。異国の言葉をお話しになる方に出会ったことがなかったので、考えたこともありませんでした」
鈴はそう答えると、う~ん、と唸りながら改めて考え始めた。
私たちは陽が西に沈む少し前に町に辿り着いた。
先ほどの道とは対照的に、町の通りは人で溢れかえり、商家や民家が立ち並んでいた。
私たちはその道を進み始めたが……案の定、道行く人々は怪訝な表情で私を見ていた。
私の見目でというよりも、頭に巻いている布のせいでそうなっているような気もする。
しかし、これを取ってしまったら余計に注目を集めそうで……あの男たちと同じような目で見られるのではないかと思ったのだ。
俯き加減で歩く私は、隣でいまだに考え込んでいる鈴を一瞥した。
彼女は町人たちの視線など全く気にも留めず、堂々と自分の隣を歩いていた。
彼女はなぜ、こんな自分と一緒に居られるのか、不思議でならなかった。
ネジ一本外れた感覚の持ち主なのだろうか、とそんな失礼なことを考えていた。
「朔様、着きましたよ。ここが私の実家、料亭・風月亭です」
そう言って、鈴は角にある立派な建物を示した。
風月亭と書かれた看板が吊されていて、周りにある他の建物に比べるとかなり大きくて豪華。
夕飯時が近いからか、その建物に入る人は多かった。
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