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女の声は、それはもう店中……いや、京の町全体にでも響き渡ったんじゃないだろうか?
それほど女の声は大きく、よく通った。
私は無意識に女の口を手で塞ぎ、壁に追い詰めた。
すると、何事かと店の奥から四人の男たちが様子を見にやってきた。
彼らは私と口を塞がれている女を交互に見た。
私はこの状況が自分にとって悪い方向に向いているのだとすぐには気づかず、彼らが鋭い視線で私を見てきたとき、嫌な汗が背中を伝ったことで解った。
そしてすぐに女から手を外したが、男たちにはバッチリ見られていたわけで、女は私から逃げるように男たちのところへ駆けた。
一番奥にいる男は女を店の奥へと隠し、残り三人はじりじりと私に近づいてきた。
「皆さん、どうかなされましたか?」
男たちの手が私に触れる寸前、柔らかく、それでいて力強い声色が聞こえた。
その声に男たちは急いで振り返り、私を指差しながらその声の主に叫んだ。
「鈴お嬢様! 盗人です、盗人がいます!!」
「お嬢様、危険ですのでお下がりください」
「今すぐに捕まえて、奉行所へつきだします」
男たちは言い終わるのと同時に、ついに私を捕まえにかかった。
私は先ほどの女のように壁に追い詰められていて、なんとか逃げ出そうと裏口へ向かって体を動かした。
男たちの手は私を掠め、一人の男の手が頭の布に触れた。
それと同時に、制止するよう命じる鈴の声が響いた。
「おやめなさい!」
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