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「しかし旦那様! この者が鈴お嬢様と一緒にいた姿を見ておりません!!」
「私がこの方にここで待っていただくように申し上げたのです。お父様にどこかお部屋が空いていないかお訊ねするために」
「それは事実だ。私は鈴からお客人を通したいということで部屋の空きを訊かれた。そして、お客人は鈴の命の恩人でもあるそうだね。……鈴、今一度訊ねよう。この者は鈴のお客人かい?」
「はい」
鈴は力強く頷きながら答えた。
鈴の父は彼女の目を数秒まっすぐに見つめると、優しい笑顔をみせた。
「その方を放しなさい」
「し、しかし、旦那様!」
「放しなさい、と言っているのだよ?」
鈴の父が強く命令すれば、私を押さえこんでいる男たちは渋々といった表情でゆっくりと手を離した。
鈴の父が彼らに持ち場に戻るよう言えば、彼らは私を睨みつけるように一瞥してから店の奥へと姿を消した。
私に鈴、鈴の父の三人だけとなった。
鈴は必死になって私に謝り、私は彼女に大丈夫だと告げた。
すると、鈴の父が彼女の肩に手を置いた。
「鈴、お客人を困らせてはいけないよ」
「困ってはいないんだけど……」
私が小さく呟けば、鈴の父は驚いた表情をして私を見た。
鈴はそんな彼の表情を見て、どうかしたのかと訊ねた。
「鈴、なぜこの方は日本語を理解して日本語を喋れるのだい?」
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