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呆れながらそう呟くと、陽菜は舌を出して悪戯っぽく笑い、先程まで周りにいた人達に向かって会釈をしてから走り出した。 その後ろ姿を親の気分で眺めていると十メートルほど先で止まって振り返ってきた。 何事かと首を傾げれば、満面の笑顔で「また明日ね!」と良く通る声で叫び、大きく手を振ると再び走り出した。 私はそれに軽く手を上げるだけで応え、彼女を追うように私も再び歩き出した。 すると、数メートル離れていた周りの人達も同様に歩き出し、その距離を埋めるように近づいてきた。 私の前後左右は人で埋まり、それがまるで当然のようだ。 「ねえねえ望月、なに話してたのー?」 「わざわざ離れたってことは、内緒話?」 「言う必要ある?」 私の左側と前を陣取っている女二人に向かってそう一言発せば、彼女たちは途端に口をつぐんだ。 周りの空気が凍ったように感じるのは間違いではないだろう。 その空気を断ち切るためか、次は右隣の男がわざとらしく咳払いをして言葉を紡いだ。 「そういや、時々ミス夕月と二人でいるよな、有栖川(アリスガワ)は。二人って仲良いのか?」 「あれ、知らないんだ。望月とあの子は同じ女子校出身なんだよ」 「その女子校では、望月は王子、あの子は姫って呼ばれてたんだよねー」 「有栖川が王子ねぇ。似合わなくはないけど、身長がな」 「陽菜ちゃんが姫ってピッタリだよな」
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