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雷光の存在を忘れ一人そんなことを考えていると、雷光が他に質問はないかと訊ねてきた。 意識を彼から逸らしていた私は突然のことに驚いたが、すぐに平常心を取り戻してふと思ったことを訊ねてみた。 「あのさ、……あんた何歳?」 「私の年かい? 私は四十六だよ。ちなみに、先ほど玄関にいた者は私の妻で琴(コト)だ。彼女は三十六歳。そして鈴は十六歳だ。朔殿はお若く見えるが……?」 「オレは十九歳」 昔の人の年齢感覚を風月家で掴み、やっぱり鈴は年下だったか、などと考えていると「ええ?!」という雷光の大声が部屋に響いた。 一体何に驚いたというのか。 「ああ、取り乱して申し訳ない。朔殿は十九歳か……」 「何歳に見えたんだよ」 「鈴と同じか、その一つ下か……」 「十五、十六歳ね……言われ慣れてるから、別に良いけどさ。……じゃあ、最後の質問いいか? なんであんたの娘は一人であんな場所にいたんだ? お供もなしに、危ないとオレは思うんだけど」 「私もそう思って供をつけようと言ったのだが……鈴がどうしても一人で行きたいと言ってね」 「それほどまでに、一人で行きたい場所だったのか?」 「……この話は、鈴本人から聞いてもらいたい」 私は彼の言葉に頷いた。 興味はない……と言えば嘘になる。 しかし、あえて訊く必要も私にはない。 ……一瞬、あの時見た鈴の悲しそうな表情が頭に浮かんだが、すぐにそれをかき消した。 静寂が二人を包み、私はこれからどうしようか……と雷光のことを頭の隅に入れておきながら考え始めた。 その時、部屋の外から鈴の声が聞こえた。 雷光が入室の許可を出すと、襖がすっと開き、鈴が姿を現した。 その後ろにはもう一人、紺色の着物を着た女がいて、傍らには料理の乗った懸盤が見えた。 しかし、琴の姿はなかった。
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