4.

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雷光はそれを聞くと、「さぞかし驚くだろうね」と言いながら楽しそうに笑った。 私も鈴の驚く顔が頭に浮かんで、つい笑ってしまった。 それから雷光は暖簾の奥に姿を消した。 私も再び百合の間へと戻った。 先ほどよりも日は高く昇っており、私は再び町を眺めた。 数人だった人の数も、今は十数人となっていた。 近くでがたがたと戸を開ける音が聞こえ、私は下を見た。 雷光が店の戸を開けていた。 隣が店なのか民家なのかは、私には区別がつかないが、同じように戸を開けている男がいて、雷光はその男と挨拶を交わした。 男は嬉しそうに笑顔で雷光と話をしていて、私にはこの男が雷光のことを尊敬しているように見えた。 その後も続々と戸を開ける人たちは皆、雷光のもとへ来ると挨拶をしていた。 雷光はいつも通りの笑顔でそれに応えていた。 私はその状況をただ上からずっと眺めていた。 すると、若い女の声が店内の方から聞こえ、その声は外へと移った。 雷光はその声で後ろを振り返ると、「おはよう、鈴」と言って、雷光の前にやってきた鈴の頭を撫でた。 鈴は嬉しそうな笑顔を見せ、集まっていた近所の人に挨拶をした。 「それじゃあ鈴、店の前に水を撒いておいてくれ」 「かしこまりました」 雷光は店の中へ戻り、鈴も水を撒く道具を取りに中へ入っていった。 集まっていた人たちは少しの間、その場に留まって世間話をしていたが、すぐに自分たちの家へ戻って行き、中へ入っていった。 私は人の少なくなった通りから空へと視線を移した。 それから少し経って、鈴が再び外に出てきた。 重たそうな手桶を運び、それを地面に置くと中に入れていた柄杓を水一杯にして、地面に撒いた。 水の滴が、太陽に照らされて輝いた。 それはまるで夜に輝く星のようで。 私はそれをぼーっと眺めていた。 楽しそうに水を撒いていた鈴が、自分の存在に気づいたことにも気づかないほど、意識をどこかへ飛ばしていたらしい。 「あ、朔様! おはようございます」 「…………あ、ああ。おはよう」
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