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鈴の声にやや遅れ気味で私は返答した。
鈴は私の様子が昨日と違うのを察し、手を止めて心配そうな顔で見上げてきた。
私はそれに困ったように笑うと、窓の手摺りに足を乗せ、そのまま二階から飛び降りた。
鈴はそれにかなり驚いたようで、目を大きく開き、口もぱくぱくと金魚のように動かした。
そんな彼女の顔が可笑しすぎて、私は地面に着くと同時に腹を抱えて笑った。
鈴はようやくその顔を元に戻し、興奮しながら私の近くへやってきた。
「なにを笑っていらっしゃるのですか! 危ないじゃないですか。お怪我でもされたらどうなさるおつもりですか?!」
「ごめんごめん。あんたに言いたいことがあってさ。階段降りるのも面倒だったし、飛び降りた方が早いかなって」
ーーそれに、どのくらい身体能力が上がってるのか知りたかったし。
「面倒でも、階段を使って下りてきてください。本当に驚いたのですよ。……それで、私に言いたいことというのは……もしかして、昨日の?」
「はい。昨日の答えを伝えようと思って」
「あの、それで……朔様のお答えは?」
「一晩、色々考えた結果……ここに居させてもらうことにした」
「本当ですか?!」
「はい。あんな愛の告白みたいなことされちゃ、離れるにも離れられない」
「あ、愛の告白?! 私はそのような意味合いを込めて言ったわけでは」
「いやぁ~、人生で初めてだよ、あんな熱烈な告白」
「ですから、あれは告白なのではなく!」
「オレは別に百合方面に抵抗はないけど、オレにあんたはもったいないくらいだし」
「私に朔様がもったいないくらいです! ……って、私は何を言って……」
「まあ、そういうことよりも前に、you have been mistaken about me(オレのこと勘違いしてるん)だけどね」
「…………?」
「落ち着いて聞いてくれ。オレは………………女だ」
「…………ええ?!」
私は鈴の両肩に手を置き、目を合わせてそう告げた。
少し頬を赤く染めていた鈴だったが、それを聞くと目を丸くして大声で叫んだ。
私は素早く耳を両手で塞ぎ、再び金魚のように口をぱくぱくして私を見る鈴の姿に笑った。
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