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『神からの特別な贈り物……。……そうかも、しれませんね』
『だから、君はただ、君らしくいればいい。わかったかな?』
『はい。ありがとうございます』
『それじゃ、まずは……琴を起こして着物を用意させるか』
『あ、雷光さ……旦那様』
『雷光さんでいいよ』
『では、雷光さん。オレは女ですが……男として、居させてはもらえませんか?』
『それは、なにか理由があるのかい?』
『はい。男として生きることで……オレにできることがあるんです』
『それなら、君を男の使用人として迎えよう、朔』
『ありがとうございます。着物は、これを使わせていただけたらありがたいのですが……良いですか?』
『構わないよ。朔が女だということは、鈴には私から伝えようか?』
『いえ、オレから言います』
……ーーーーー
私は一人、先ほどの雷光との会話を思い出していた。
腹を抱えて笑っていた私が突然空を見上げてぼーっとしているのを心配したのか、鈴は私の着物の袖を引っ張ってきた。
私はそれで我に返り、鈴に微笑んだ。
「どうかした?」
「……いえ。朔様は、なぜいまだに男装をされていらっしゃるのですか? 私のお着物をお貸し致しますのに」
「ああ、こっちの方が身軽でいいし、……あんたも、こっちのオレを見てたいだろ?」
「そ、そんな!」
「冗談だ。ほら、鈴お嬢様。水撒きのお仕事がまだ終わっていませんよ」
「朔様!!」
「オレはもうこの店の奉公人なんだ。朔って呼び捨てでいいよ」
「でしたら、私のことも鈴とお呼びください。朔にお嬢様と言われると、なぜだか寒気がいたします」
「うわっ、突然キャラチェンジかよ」
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