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「きゃら……? 朔、それはどういう意味なのですか?」
「……教えない」
私はそう言って逃げるように店の中へ入ろうとした。
しかし、鈴の行動の方が一歩早く、彼女は私の着物の袖を思い切り引っ張ってきた。
私は後ろに転びそうになるのをなんとか防ぎ、興味津々な顔で私を見ている鈴を見てため息をついた。
これは答えるしかなさそうだ。
「キャラーーcharacterのここでの意味は性格。changeは変える。つまり、性格を変えるってことだ」
「なるほど……って、私がいつ性格を変えたと?!」
「だから教えたくなかったんだよ」
私は鈴に説明をしながら彼女の手をさりげなく袖から外し、逃げる準備を整えていた。
そして、鈴が納得している間に店の中へと避難し、そう叫んだ鈴の声に小さく呟いた。
店の玄関まで来ると振り返り、いまだに怒っている鈴に視線を合わせた。
鈴も、私からの視線に気づいたのか顔は怒りつつも、しっかりと目を合わせてきた。
「オレも、あんたの…………鈴のことを知りたい。傍にいるよ」
それだけ言うと、ポカンと口を開けている鈴を放置して、店の入り口にかけられている暖簾の奥へ向かった。
傍から見たら、私はいつも通りに見えただろうが、内心は恥ずかしすぎて穴があったら入りたい状態だった。
よくもまあ、鈴はこんな台詞が言えたものだ。
私もついさっき言ったのだが。
暖簾をくぐり抜けて数秒後、鈴の「ええ!!?」という叫びが町に響いたことは、言うまでもない。
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