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──でも、具体的に何が起きるかを覚えてない……。つくづく、役立たずな記憶だ。
自嘲気味に笑う私をよそに、新見もまた笑みを浮かべていた。
しかしそれは晴れ渡った青空のような清々しいものだった。
「何を考えている……か。むしろ何も考えていないな」
「オレのことを連れ出しといて、何も考えてないって……」
「それは別だ」
「じゃあ何の用?」
「ああ、野口にも頼んだことだが」
「新見さんが頼み事?! 明日は雨───」
「野口と同じ反応をするな」
珍しい事につい口が先に動いてしまい、新見に手で塞がれてしまった。
野口と同じリアクションをとったという事実に悲しくなったが、とりあえず息ができない。
今日は厄日だと本気で思いつつ、ギブアップの意を込めて新見の腕をバシバシ叩いた。
三秒ほどして漸く解放され、深く息を吸い込み、見上げた新見の顔には先ほどの笑みとは一転、いつもの表情が張り付いていた。
「で、頼み事って?」
「芹沢さんのことだ。俺は当分、こっちには戻らない。あの人に何かあれば、お前が対処しろ」
「対処って……はい、それは承知したけど、何かってなに? というか、当分戻らないって、さっきも芹沢さんの傍にいなかったし、どこで何してたんだよ」
「お前には関係ない」
「関係ないけど知りたい。あんた、ずっと芹沢さんの傍に居ただろ? なのに突然傍を離れて…………そう、梅さんが来てからだ」
ここ数日のことを回想しながら話していれば、思い当たる節が出てきた。
そう、芹沢と梅の想いが通じたあの日から、二人が一緒にいるところを見た記憶がない。
たかだ四日間だけだが、常に共に行動していた二人が今更別行動するのはおかしい。
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