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未だにコントを繰り広げる永倉と原田に耐えきれず、ついに藤堂に訊ねてみた。
視界の隅で肩が小さく震えていたが、声音は思っていたよりしっかりとしていた。
やはり直視しなければマシなようだ。
すると藤堂が言っていた通り、近藤が広間に現れた。
和んでいた空気が一瞬にしてキリッとしたものに変わり、そして少し弛んだ。
「あれ、土方さんと山南さんがいねぇな」
不思議そうに呟く永倉の声が聞こえたのと同時に、近藤が朝の挨拶をした。
誰も二人の副長がいないことについてはツッコまない。
日常的にあることなのだろう。
「それじゃあ、食物に感謝をして、いただきます」
皆が手を合わせ、しっかりといただきますを言ってから食べ始めた。
微かに食器と箸のぶつかる音が響き、話し声は騒がしいまではいかないが聞こえている。
永倉も原田も想像より静かに食しているが、他と比べたらやはり煩い。
それに、度々こちらへ箸をのばしてくる永倉を牽制するため、落ち着いてはいられなかった。
五分ほど経った頃から、食事を終えた隊士が広間を退室し始めた。
なぜそんなにも早いんだ?! といつものように驚いていれば、右隣と真向かいの二人も席を立った。
「じゃーな、朔」
「残さず食べろよ」
そう言い残して去る二人の姿に多少焦ってしまったが、左隣を見て安心した。
量は私より多いものの、ペースはそこまで早くない。
──なんか、居残り仲間みたい。
給食の時間を終え、昼休みに入っても食べきるまで席から離れられない学生気分で、そのままのんびりと箸を進めた。
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