23ー(2).

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大半の隊士が広間を出ていき、近くで食べていた野口も私に声をかけてから広間の入口へ向かっていった。 すると、彼が開ける前に襖が開き、土方と山南が姿を現した。 「おはようございます、土方副長、山南副長」 「!! やあ、おはようございます、野口君」 「今日は茄子の味噌汁におひたし、焼き魚ですよ」 「ああ、いつもご苦労。今日と明日は非番だったな。部屋でゆっくり休め」 「は、はい。ありがとうございます……」 普段、巡察後の報告や任務終了時くらいにしか労いの言葉をかけない土方に、野口は動揺した。 そのおかげなのか、山南が目を見張ったことや、ほんの微かに血の臭いがすることに気づかなかった。 そのまま広間を出ていき、土方と山南は野口の背を見送ってから近藤のもとへ向かった。 二人の姿に、沖田と和やかに話していた近藤の顔つきが一瞬硬くなった。 沖田も血の臭いを感じたのか、笑みを消した。 「トシ、山南君……」 「任務、無事遂行して参りました」 「芹沢筆頭局長へ報告に行って参ります」 その言葉に近藤は辛そうに頷き、沖田は何の任務なのか解ったようで、珍しく目を大きく見開き、そして伏せた。 すでに足早に広間を去った土方と山南同様、近藤と沖田もまた、異様な雰囲気を纏って出ていった。 その一部始終を、私は箸を止めてじっと見ていた。 近藤たちと距離があるので、会話は全く聞こえなかった。 ただ、一人一人の表情の変化はわかる。 ずっと胸騒ぎがしていた。 良くないことが起こっている気がしてならない。 ──一週間前の、新見さんと別れた時以来だ。 結局、あの本には“芹沢の腹心の部下”としか書かれてなくて、詳しいことはわからなかったし……陽菜が話していたことも思い出せない。
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