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臭い。とにかく、臭い。
十五年振りにバルダンを訪れたリアの、最初に抱いた感想がそれだった。
ろくに整備されていない下水か、街のいたるところへ無造作に撒き散らされる汚物か、日に一度の行水すらままならぬ住人の体臭か――。
あるいはそのどれもが混ざり合い、まだ街も見えないうちから饐えた臭いを漂わせていた。
故郷の地を踏みしめたとて、感慨らしいものは一向に湧いてこない。
バルダンで暮らしていた頃の記憶がないというのがその理由だが、仮に記憶があったとしても、鼻をつまみたくなるほどの悪臭の中にあっては、感傷に浸る余地もなかったに違いない。
リネーブルを経ってから、かれこれ一週間が経過していた。
バルダンは、砂漠に囲まれた小さな街である。
徒歩で行くことのできる場所でないというのは分かっていた。
四日目の夜には到着する予定が、ヒッチハイクで何とかなると楽観していたのが災いした。
予定では、四日目に到着するつもりだった。
順調だったのは初めの三日だけで、四日目以降は、止まってくれる車はあれど、みな窓を開けるなり顔をしかめて走り去っていってしまった。
どうやら自分の体臭が原因らしいと気がついたのは、昨日のことである。
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