ヒーローと呼びたければご自由に

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殺されたのは、隣の区画に暮らす学生だった。 彼らの間では、夜な夜な仲間たちと貧民外へ繰り出し、道端で眠る貧民へ石を投げつける『射的ゲーム』が流行していた。 初めは、制限時間内にいくつ当てることができるかを競うゲームだった。 やがて昏倒させればボーナスというルールが加わり、誰もがボーナスを狙ってより大きな石を探すようになった。 夜ごとの暴行に怯える日々が続いた。 流血沙汰になろうと、誰も助けては暮れないことを彼らは知っていた。 的にされた貧民は、頭まで毛布をかぶって丸まり、甲高い笑い声が去るのを待つことしかできなかった。 ある夜。 なかなか倒れない貧民に痺れを切らした青年は、ルールを無視して毛布を引き剥がし、直接石で頭部を殴打した。 ――殺される。 的にされた男は、笑いながら自分を殴打する青年を見て、死を覚悟した。 しかし、彼が固く目をつぶると同時に、背後から青年を襲う者があった。 夕闇が辺りを包んでいたため、それが誰であったかは分からない。
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