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それにしても、とリアは呆れ混じりに有刺鉄線を見上げた。
区画線と言うにはあまりに物々しい。
少なくともリアが暮らしていた頃は、まだこれほど危険な街でも汚い街でもなかった。
当時の記憶はないが、そう聞いている。
有刺鉄線に沿って歩いているうち、入り口はすぐに見つかった。
武装した男が六人、扉の前に並んでいる。
扉といっても、有刺鉄線の一部をしきって蝶番をつけただけのおそまつなものだ。
男たちはいずれも肩に銃を担ぎ、照りつける日差しに負けじと街の様子に目を光らせている。
「クソ暑い中ご苦労様です」
声をかけられた男は、訝しげに眉をひそめ、頭から爪先まで無遠慮にリアを眺め回した。
「ガキが何の用だ」
低い声で言って、男が一歩進み出る。
リアは首をほぼ垂直に上げて男の顔を見上げ、にこりと微笑んだ。
「ちょいと出稼ぎに」
言いながら、腕をまくる。
肩口に彫られた隼を一目見た瞬間、男の顔が青ざめた。
周りにいた男たちも、目を見張り、後ずさった。
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