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「ガキはガキでも貴族の末裔。汚い金で買った飯など食えないと、見向きもしないものですから」
「落ちぶれても気位だけは一丁前ってか。単にナメられてるだけじゃねえのか?」
「そんなことは――」
「適材適所って言葉がありやす」ジークがヴァルの言葉を遮った。「子守には向かずとも、これを持たせりゃバルダン一だ。ねえ、ヴァルの旦那」
これ、と言いながらジークは指で作った銃の先をヴァルに向けた。
ジークはヴァルに対しても慇懃な態度を崩そうとはしない。
そこに尊敬や畏敬の念といったものを期待するほど、ヴァルはめでたい思考回路の持ち主ではなかった。
ヴァルは下唇を噛み締めたまま、答えない。
ジークは芝居がかった仕草で肩をすくめ、上目遣いにロドルフを見た。
「このままじゃ、身代金を受け取る前にくたばっちまいますぜ」
「そんなこたあ分かってる。買い出しに行くぞ。ついて来い、ヴァル。てめえが食い物を無駄にしたんだからな。ジーク、てめえはガキを見張ってろ。舌でも噛み切られたら元も子もねえ」
「了解いたしやした」
馬鹿丁寧に頭を下げるジークに背を向け、ロドルフは地上に繋がる扉を開けた。
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