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簡単な挨拶を済ませ寮に向かう途中授業を受けている生徒達が目にとまる、今までの学校となんら変わりの無い様子に少しだけ安堵するがその内実は上辺を見ただけでは判断出来ない 「ここも変わらないようだね」 そう呟く佐久も表情は硬い、どうやら同じ思いのようだ、授業中だったため担任教師が職員室におらず教頭にだけ挨拶した、そのためあまり詳しい状況を尋ねることが出来なかったのが悔やまれる 「おもしれぇー奴いるかな~」 うきうきと体を揺らす瑠衣はこちらの心配をよそにのんきなものだ 「あんま騒がしくすんな、早く来い」 興味深げに教室を覗き込もうとする瑠衣の首根っこを押さえ寮へとたどり着くと、どこのホテルですかとばかりの豪華な建物 「すっげぇ~」 「これはまた、やりすぎだろ」 感嘆の声を上げる瑠衣と呆れたように建物を見上げる佐久、入学金や授業料がばか高いとは聞いていたがこれは寄付金の額も相当な物だろうと予想出来る 「確かにな、金持ちの考える事は分かんねぇな」 瑠衣の叔父、伸也の強引さに負けここへ入ることを了承したがその判断はやはり間違いだったかもしれない、こんな所で普通に生活できる奴らがまともなはずがない 城山家と対立していた瑠衣の祖父、源三が死んだ今となっては後継人となった伸也にそうそう逆らえるはずもないのだが、瑠衣が城山に絡め取られてしまうのではないかとの恐怖が拭い去れない 「どうした永太?」 立ち止まってしまった俺を心配そうに見つめる佐久の瞳はその不安を共有しているかのように揺れている 「いや、でけぇなと思ってね」 「ああ、でかいな」 建物のでかさではない、多分それは佐久にも伝わっているだろう 瑠衣が中学にあがった頃から城山からのアプローチが激しくなった、瑠衣の両親の結婚に反対していた祖母が亡くなり伸也が親戚を黙らせたのが始まり 人として嫌いな訳ではなかったが伸也の心遣いは兄弟にとっては迷惑なだけだった、源三がいた間はそれでも幾ばくかの遠慮があったようだが… 「お~い、まだいかねぇ~のか~?」 急かすような声に我に返るとそわそわと寮を見つめる瑠衣、早く中の様子を知りたいのだろう、また勝手な行動をしない内に釘を刺しておかなければいけない
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