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この愛しい弟を幾度となく突き放しながら、その愛を繋がりを確かめずにはいられない俺、本当は真綿で包むように大切にしてやりたいのに俺の中に深く沈澱し溶ける事のない闇がそれを赦さない
「永太、永太と佐久がいなかったらおれ生きていけねぇ、嫌いでもいいから置いてかないでくれよ」
「嫌いじゃねぇから、あぁーおれが悪かった、わかったから」
こうやって一度は瑠衣の言葉に満たされながらも直ぐに渇いてしまうのは何故だろうか
澱んだ俺の心は瑠衣を箱の中に閉じ込め自分だけの物にしなくては真に満たされる事はないのかもしれない、例えそこには瑠衣の抜け殻しか残らないと分かっていてもそう夢想してしまう自分がいる
そして今、兄弟だけの擬似的な箱庭から出て行かなければならない恐怖
「馬鹿だな永太、離ればなれになる訳じゃない、同じ学校に行くんだ、何も心配いらないさ」
全てを見透かしたかの様な佐久の呟き、佐久は多分俺と同じ渇きを持っている
「そうだな…佐久、瑠衣おまえの好きにしていいぞ」
「…おれ、永太の言う通りにする…」
しがみつく瑠衣の指に力が篭る、そこにあるのは信頼か、見放される事への恐怖か
「ふぅ…、全く瑠衣は永太に甘いな」
どこか呆れた様な佐久の声が遠く響く
例えその時が来たとしてもおれは決して瑠衣を手放さない、呪いにも似た確信を頭に過ぎらせつつ瑠衣の肩を深く抱き寄せた
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