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笹川 喜造
ササカワ ヨシゾウ
今年で三十路になる俺は、同期達が出世する中未だに営業の外回りである。
‘よしい’のあだ名で社内では通っている。自分で言うのも何だが、あまり仕事をやる気は無い。
勘違いしないで欲しいのだが、出来ないのではなくやらないのである。
朝から晩まで馬車馬の様に働いても雀の涙程しか上がらない給料。家庭を持てば価値観も変わるのだろうが、女すらいない俺はサービス残業を遂行する同期を尻目に確実に定時で上がっている。まぁ、それも部長の俺弄りの理由の一つであろう。
とは言え社内での俺の受けが悪い訳ではない。管理職クラスには悪い受けも、同僚達からの受けは良い。
それは俺のはっちゃけた性格にあり、社内のムードメーカーを一手に引き受けている由縁である。
「…よしい、あんたまた部長に弄られてにやけてたでしょ?」
デスクに座ると同時に隣の同期の子が待ってましたとばかりに話し掛けて来た。
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