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命か金か。
ブルーの台詞は、遠回しながらもそれだけを聞いていた。
こう聞かれてしまったら、よっぽど壊れた人間か、事情のある人間以外なら、確実に命を取る。
そして、サングラスの男の答えも普通の人間の答えだった。
しばらく頭を抱え込んで考えていたが、遂に結論を出した。
「……分かったよ。報酬はそっちの言い値で構わんよ…………」
護衛達が驚いた物の、彼が言ってしまったらそれは覆せない。
「では、契約成立ということで。奪え返した場合、モノはしっかりと返却しますのでご安心ください」
極めて事務的で、感情など完全に捨てた抑揚のないブルーの声が事務所に響き、サングラスの男は煙草を取り出しながら事務所から出ていった。
「半分でも十分儲けにはなるだろう」
男達が出ていってから暫くして、交渉中は一言も喋らなかったブルーの仕事仲間の男が口を開いた。
まだ20代なのに、低くてまるで老人のような声だった。
「……。何となく、かな」
問いに、自分のことなのによく分からないように答えるブルー。
「それよりさ、時間無いから早く準備しよ」
ブルーがそう言うと、三人はそれもそうだな、と思い、ブルーの答えに疑念を抱きながらも個室へと向かい、準備をし始めた。
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