prologue ~始まりと、今~

2/3
196人が本棚に入れています
本棚に追加
/729ページ
「お、お前、自分が……何をしてるのか分かっているのか?」 「い、今すぐに……や、止めなさいっ!」  照明が半分ほど落ちた薄暗いホテルの広間で、二人の人間は、血まみれになりながらも自分達の前に立つ人間を見上げるような感じで倒れていた。  だが、二人が必死に懇願しても、前に立つ人間の耳には届かなかった。  前に立つのは、まだ10歳にもなっていないような少女。  少女は、目の前の二人を見てこう思う。  私は、自分で生き方を決めたいのに……何で何もかも決められなくちゃならないの! と。  その時、遠くで派手な爆発音と、多数の悲鳴が聞こえた。  それでも少女は全く動じず、ただただ目の前の二人を睨んでいた。  そして、少女は右手をゆっくりと二人の方へ向けた。  その右手の中には、少女には全く似合わない黒い鉄の凶器。  二人は少女を止めようと手を伸ばしたが、傷ついた体では動く事すらまともに出来なかった。  二人の最後の悪足掻きも気にせず、少女が人差し指に力を込めた。  その瞬間二人が見た少女の眼は、絶望に満ちた、底の無いような冷たい眼だった。  広間に、二回だけ大きな乾いた音が響いた――――――…………  動かなくなったモノに一瞥をくれると、少女は弾倉を見て、一発だけ弾丸が入っていることを確認した。 そして――――――――、
/729ページ

最初のコメントを投稿しよう!