196人が本棚に入れています
本棚に追加
/729ページ
「それじゃあ、宜しく頼むよ」
おばさんに見送られ、ブルーはチラリと自分の両腕を見た。
手の甲から、肘に至るまでしっかりと包帯の巻いてある、華奢な腕。
包帯がある以外は一見普通の腕なのに、この腕はもう、何人もの命を奪ってきた、血の臭いの染み付いた腕。
その腕でも人の役に立てるのだと思うと、少しだけやる気が出た。
軽く運動をしてから、暴れる二人を睨む。
そんな事は露知らず、先ほどよりも盛んに二人は暴れていた。
その二人の間に向かって、ブルーは歩いていく。
二人は、ブルーが手の届く距離まで近づいている事に全く気づかなかった。
そして、背の高いほうの男がもう一人に向けて右フックを繰り出した瞬間、ブルーが横からその腕を小突いて強引に進行方向を変えた。
フックを左手でいなそうとしていた背の小さい方の男は、突然の乱入に対応が出来ず、進行方向の変わった腕をモロに顔面にのめり込ませた。
ぐしゃっ、と鈍い音がするのと同時に背の小さいほうの男が力を無くしたように倒れていく。
だが、完全に倒れこむ直前に何とか近くにあった机を掴んで立ち直た。
そして、二人は「何してくれんだ」とでも言うような目でブルーを睨んだ。
さっきまで完全に対峙していた二人が、まるで双子のように同時にブルーの顔面に向かって正拳突きを繰り出した。
しかし、それを軽くしゃがんだだけでブルーはかわし、背の高い方の腕を掴んで彼が殴っている方向と同じ方向に力を加えた。
あまりに急な事だったのと、思いっきり殴っていた事が作用して男は5m程吹っ飛んだ。
一見華奢にしか見えないブルーがそれをまるで当たり前のようにやった。
普通の考えでは、身長180cmはあろうかという男を150cmもない少女がどう吹っ飛ばすか以前に、飛ばせるなんて夢にも思わない。
いつの間にか店の外から見ていたギャラリーが一段と沸いた。
最初のコメントを投稿しよう!