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サングラスの男が苦い顔をしたので、周りの空間が一瞬重い沈黙に包まれた。
それを突き破る、ブルーの高い声。
「あなたの様子から察するに……そうとう重大みたいですね。
……最悪、命が無くなるかもしれないぐらい」
サングラスの男の顔がさらに苦くなった。
それは、ブルーの放った言葉が完全に的を射ていたからだ。
何故なら、サングラスの男の立場は彼の組織内では高い方で、本来はブルー達に仕事を依頼するような人間達でもない。
彼等は、組織内ではいわば技術屋である。
技術屋だから基本的に戦いなんてする事はないし、そのような手段に出ようとしない。
だから、この場でブルー達に仕事を依頼するということは、彼等が組織で大きなミスをしてしまい、そのミスの対応に追われて仕方なく依頼している、ということである。
「ああ……あんたの言うとおりだよ。
俺達は所謂情報系の人間なんだがな、一昨日に重要な機密をDVDに入れて運搬してたんだが……
俺達だけじゃ役不足だったみたいでな。簡単に盗まれちまった。
勿論組織は俺達の責任とした。まぁ、当然といえば当然だが
んで、取り返せなきゃ、俺達は消されるって訳だよ……」
そう、罪人のような、重い声でサングラスの男は言った。
「そして、そのデータの奪還が私達への依頼である。
ということですか?」
ブルーの仕事仲間の、女の方がそう言うと、思い出したように男は付け加えた。
「間違ってはないな。破壊でも構わないが。」
どんどんと男の声は小さくなっていった……。
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