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木田の話しを耳にする幸村。その顔には怒りや悲しみは無く、ただ嬉しそうに微笑んで見える。
「そうだな。君の言葉には・・・何ら間違いは無いよ。正しい」
この幸村の一言で、木田は自分の軽率な発言に気が付いた。
幸村は全てを理解している。
彼が、如何に残酷な選択を強いているのか、この日本で最も若者の未来を望んでいるのは、外ならぬ幸村だけなのだから。
木田は、自分の軽はずみな言動を恥じて、静かに口を閉ざしていた。
幸村は、彼の気付きを知ってか知らずか、脚を止めて木田に向き直す。
幸村に合わせ脚を止めた木田は、幸村の顔を引き込まれる様に見守った。
物言わぬ上官の顔には、強い決意が感じられる。
全てを飲み込み、それでも歩みを止めない覚悟の瞳。
「木田くん」
「はい!」
木田は予知にも近い感覚で、幸村の目に未来の姿を見据えていた。
「行き着く先が地獄でも、俺に着いて来てくれないか」
この人が・・・この人無くしては、世界を救う可能性は皆無なのだと。
「・・・必ずや、この木田正樹が、幸村副司令のご期待に応えてみせます」
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