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会議室を後にし、幸村は首元に指を入れ込むと、ネクタイを緩めて空を見上げた。
初めての呼吸の様に、大きく酸素を肺に送り込むと、今まで忘れていた様に全身に気怠さが広がった。
幸村は、単なる報告の為に、本土まで戻されると言う嫌がらせにも似た指示に、無駄な労力を使った事で酷く嫌気がさしていた。
本来なら、少しでも現場で指揮を取りたい。仲間の命を救える優秀な指揮官は、自分以外には有り得ないと自負している。
彼の自意識過剰な考え、それは別段間違いでも無かった。
戦いで多くの優秀な指揮官を失ったのも事実。生き残ったのは臆病者と、更に優秀な者だけ。
「お疲れ様です幸村さん」
「ああ、」
幸村は側に駆け寄ってきた男に上着を投げ渡し、彼から報告書を受け取った。
それを流すように読み上げながらも、足早に歩みを緩めず歩き続ける。
最近では、ゆっくり椅子に腰掛ける事さえしなくなっていた。
一分一秒さえ無駄にはしたくない。彼の責任感がそうさせる。
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