78人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
遠い人里の方から年明けを告げる鐘の音が響いて来る。
土方は風間の猪口に酒を注ぎながら鐘の音を聞いた。
「年が明けたな、千景」
「ああ、そうだな」
猪口に注がれた酒を仰ぎ、風間は土方の腰に手を回して抱き寄せた。
土方もされるがまま身を預け、徳利を盆の上に置いた。
ただ静かな空間に鐘の音だけが響き渡る。
風間は空になった猪口を置き、抱き寄せた土方の身体を腕の中に閉じ込めて微笑んだ。
「歳三よ、今年も変わらず俺の隣で笑っていろ。離れる事は許さん」
彼らしい傲慢な言い方。それでも嬉しく感じるのは彼に心底惚れているからだ。
土方は風間の背に腕を回して抱きつくと、広く温かな胸へ顔を埋めた。大好きな彼の温もりと香りに包まれる。
「それなら、お前も俺の隣に居てくれよ。離れたら承知しねぇからな」
「無論だ。貴様以上に愛しい者は居ない」
「ったく……恥ずかしい奴」
「そんな俺が好きなのだろう?」
「……馬鹿野郎」
風間はクスリと笑った。土方が照れているのだと分かるからだ。
現に土方は頬を赤く染めながら顔を隠すようにしている。酒のせいだけでは無い赤らみが可愛い。
胸元に埋められている彼の顔が見たくて、間に手を滑らせて顎を持ち上げる。
朝露に濡れた菫の花を思わせる瞳。
吸い込まれるように顔を寄せると、土方も自然と瞼を伏せる。そうして伏せられた瞼に唇を落とし、頬から唇に移動させていく。柔らかな赤い唇。
最初は優しく何度も啄み、己を誘い込むようにうっすらと開かれると、舌で口内を愛撫した。
くちゅりと音を立てながら深い口付けを交わす。
「ふっ……んぅ……」
飲み込め無い唾液が口端から滴り落ちる。
土方は頬を上気させ、縋りつくように風間の首へ腕を回した。
口付けを交わしながら土方の着物に手をかけ、肩から肌蹴させていく。
露になった雪のように白い肌が視界に入ると、名残惜しさを耐えながら口付けを終えてその肌に吸い付いた。
白い肌はすぐに赤い花を咲かせる。そこを舌で舐め、土方の身体を横抱きにして立ち上がると、布団が敷かれている奥の間に向かった。
「姫始めだな、歳三」
「ばっ……!?何言ってやがんだ!」
「そう照れずとも良い。存分に愛してやるぞ」
そう言って微笑まれてしまえば何も言えなくなる。
褥の上に寝かされ、覆い被さってくる風間に土方は笑った。
最初のコメントを投稿しよう!