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土方は、ぐったりと風間にもたれ掛かっていた。
「はぁ……ったく、まさか外でやるとはな」
「何を今更言っている。我らを見ていたのは月と桜のみ。気にする事もあるまい」
そう言って笑う風間。
土方は深い溜め息を吐くが、悪い気もしないのが本音である。
「愛しているぞ、歳三」
「っ……あ、ああ」
不意打ち過ぎる告白に、土方は胸を高鳴らせて頬を真っ赤に染めた。
女相手に睦言を交わすのは慣れていた土方だったが、どうも風間相手だと調子が狂って仕方ない。
けれど己も想いを返したくて、土方は風間の頬に唇を寄せた。
「俺も……愛してる。……ずっと、俺の傍にいてくれ」
それは切なる願い。土方は大切なものを、あまりにも多く失い過ぎた。
「当然だ。お前は俺のもの、そして俺は……お前のものだ」
風間は柔らかく微笑みを浮かべ、土方を強く抱き締めた。離さぬと、何があっても離さぬと言われているようで土方は嬉しかった。
「千景……」
土方もギュッと彼に抱き付き、目尻に涙を溜めながらに微笑みを浮かべた。
そして、内にある愛しい想いを全て乗せ彼の名を呼ぶのだった。
――夜空には輝く月、そして風に乗って散りゆく桜。
今までも、これからも変わらぬであろう風景を、これからは二人で愛でていこう。
終
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