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土方は本日の業務を終え、壁にかけられている時計を見上げてから席を立った。
約束の時間は七時。今から向かえば余裕だ。
「それじゃ、先に失礼します」
「おう、お疲れさん」
同じ部署で働く同僚たちへの挨拶もそこそこに、土方は会社を後にした。
自分でも分かる程、今日の足取りは軽い。それもこれも、今日が土方の誕生日だからである。
取引先の社長でありながら、土方の恋人である風間から誘いを受けたのだ。
誕生日を恋人に祝ってもらえる。それ以上に嬉しい事はないと、土方は心を弾ませた。
そうして向かった待ち合わせ場所。可愛い天使のオブジェ前に、その人は佇んでいた。
白いスーツだけでも目立つというのに、太陽のように眩しい金の髪が更に彼を引き立たせる。
「早いじゃねぇか、千景」
「約束の時間よりも早く来て恋人を待つ。それが紳士というものであろう?」
「なに気取ってやがんだ……馬鹿」
傲慢そうに見える外見からも想像出来るように、天上天下唯我独尊な性格をしている。
だが、今のように律義な一面もあるのだ。交わした約束は必ず守る。何があろうと曲げる事はしない。一本筋が通っている所に、土方は惹かれた。
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