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街頭だけが辺りを照らす人気のない道に、冷たい風が吹く。
「すみませんでした!」
頭を深く下げて花形は言った。岩井は振り向かない。
背中だけが、花形を見つめていた。
「僕……このチームが好きです。ずっと一緒にいたいです!お願いします!」
解散した時の悲しさ。交番勤務に戻った時の悔しさ。再結成した時の嬉しさ。
――母を守るために。
「……そんな恥ずかしいこと大声で言うなや」
頭をポリポリかきながら岩井は花形に振り返った。
「しかも意味分からんし。ひとつ間違えれば愛の告白やないか」
「す、すみません……」
「……ま、俺はその方が嬉しいけど」
ぼそっと呟く。聞こえていなかったのか、花形は先程の告白について、声に出しながら自問自答している。
「じゃあ戻るか。どうせおっさん一人で待ってるんやろ?」
「あ、そうだった!早く行きましょう!」
忘れられていた山村を哀れに思いながら岩井は歩き始めた。花形も小走りで彼について行く。
「今日はやる気茶屋の奢りな」
「またですか!?てかさっき二人が奢ってくれるって話してたじゃないですか!」
「気が変わった。よっしゃあ飲むでー!」
花形の尻を叩き岩井は走り出した。
「そんなぁ~」
花形は情けない声を出して、岩井の後を追った。
fin
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