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事件は解決した。同時に心の片隅にあった重荷が軽くなった気がする。
片桐は対策室の扉を開けると、普通ならもう誰もいない時間帯だというのにとあるデスクの明かりが点いていて。そこに座っていたのは花形だった。彼はドアの音に反応し、伏せていた顔を上げる。
「あ、片桐さん」
目を大きくして驚く花形に軽く手を上げて自分のデスクへ向かう。
「大丈夫ですか?」
唐突に聞かれ、片桐はその意図に悩む。自分が拳銃を使ったことを心配しているのだろうか。
「……あぁ」
「どうかしました?」
聞きたいのはこっちの方だった。それは花形が拳銃を弾かれた時の怪我の具合を聞きたいのもあって。
「いや、別に」
「じゃあ、僕帰りますね」
立ち上がって「お疲れ様です」と挨拶をする。
「花形、待っ――」
「っ……!」
止めるため、思わず手を掴んでしまった。顔をしかめる花形に罪悪感を感じてすぐに離す。
「あ、悪い……そんなに痛むなら、看てもらった方がいい」
「僕のことは心配しないで下さい」
花形は笑いながら言った。
人のことは心配するくせに、自分のことは心配するなということなのか。
「……す……ろ……」
「え?」
「心配するだろ……“仲間”なんだから」
花形は再び目を見開く。
一匹狼な片桐だとは思えない言葉だった。でも、やはり恥ずかしいのか声はいつも以上に小さかったが。
「えっ……は、はい。すみません」
動揺して何を言えばいいのか分からなく、とりあえず謝った。
言動のわりにそっぽを向く片桐を見て、笑みが零れる。
「わかりました、医務室行ってきます」
花形は走って階段を駆け、部屋を出る前に立ち止まった。
「片桐さん!」
大きな声に振り向く。
誰もいない夜中、更に彼の声は響いた。
「ありがとうございます!」
fin
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