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「おっ、やっと帰ってきた」
「おかえり、花形くん」
対策室に入ると、岩井と山村が中央のテーブルに集まって話をしていた。
「あれ……二人共、まだ帰ってなかったんですか?」
階段を降りて、二人に寄った。
母親を家に送った花形は、やり残した仕事をしようと戻ってきたのだった。
「お前を待っとったんや、早よ行くぞ」
「え?僕これから書類を……」
「んなの明日でええやないか」
自分のデスクへ向かおうとする花形の腕を掴んで岩井は言う。力で適わないのは分かっていたので、反抗はしない。
「そうそう、たまには一緒にご飯食べようよ」
「たまにはって……最近いつも一緒に飲んでるじゃないですか!」
それは山村会に強制参加させられているからである。参加したらしたで、楽しんでいるのも事実なのだが。
花形のツッコミも虚しく、三人は対策室を出た。
向かった先は静かな居酒屋だった。いつも騒がしいバーだから、今の気分では無理だと思っていた花形は少しほっとした。
「さぁさぁ、飲め飲め!今日は珍しくおっさんの奢りやからな!」
「えぇー!?二人で割り勘って言ってたじゃん~」
相変わらず二人は向かい合ってコントの様な会話を繰り返している。
冷えたビールが汗をかいて自分を見つめていた。まだ手に取れず、花形は目を背ける。
「……ありがとうございます」
上手く笑えた気はしなかったが、素直に礼を言った。
そんな花形を見て山村は苦笑し、岩井はため息を吐く。
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