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「はじめまして、瀬口佳奈といいます」
社内恋愛禁止条例、もし仮にそんなものがあったとしても
そんな条例を越えてしまうほど、俺は、素敵な女性に出会った。
「3年間という短い期間ですか‥皆さんと素敵な時間を過ごせたらな、と思います」
2年前の春だった。
俺がこの学校に赴任して1年が経った新学期。
彼女は新任教師としてここにやって来た。
俺は今年から担任を持てることになり、副担任はなんと瀬口先生。
そんな瀬口先生と、俺と、二人きりの職員室には重い空気が漂っている。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥瀬口先生は、どっから来たんすか?」
「‥‥福岡です」
「‥福岡!福岡‥は、あ、東北ですね!」
「九州です」
「‥‥‥」
瀬口先生は表情ひとつ変えずに、パソコンをかたかた、と打ち続ける。
気づけば、思い出せば、
冷めた目も、真面目そうなところにも全部に惹かれていた。
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