送り火

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明らかに土方は朔の反応を楽しんでおり、朔は内心そんな土方に悪態を吐きつつ、梯子を上った。 梯子を一段上る毎に地面から遠ざかり、その高さと足場の心許無さに朔の身体は僅かに震えた。 (もうやだ!!土方さんの馬鹿!) 朔は半泣き状態で梯子を上り、ようやく屋根の上に頭が出るところまで上ると、夜風が吹き抜けていった。 吹き抜ける夜風に朔は思わず目を閉じ、夜風が収まった頃にそっと目を開けると目の前には土方の大きな手があった。 そのまま顔を上げると、土方が口の端を僅かに上げて笑いながら、朔に手を差し延べていた。 「何だかんだ言いつつ、ちゃんと上ってこれたじゃねぇか。ほら、手、貸しな。引き上げてやるからよ」 「今すぐ下りたくて堪らないんですけど」 朔がそう言いながら土方の手に己の手を重ねれば、土方の大きな手がしっかりと朔の手を握り締めた。 そして、力強い手で朔を屋根の上へと引き上げると、朔が落ちないように土方は朔の腰を抱いて支えてくれた。 屋根の上へ引き上げられた瞬間、その宙に浮く様な感覚に朔は思わず目を閉じると、空いたもう片方の手で土方の着物にしがみついた。 しっかりと土方が支えてくれている為、落ちそうになる事はないが、屋根になど上った経験の無い朔にとっては、やはり怖いものは怖いのだった。 朔は屋根に上った後も土方にしがみつき、土方の胸に顔を埋めていたが、そんな朔に土方は苦笑しつつ、声をかけた。 「お前の事は俺が死んでも落とさねぇから、安心して顔上げて京の町の方見てみろ」
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