送り火

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土方はそう言うと自身も朔から視線を離し、京の町中を見渡した。 眼下には、夜闇に浮かび上がる町中の明かりが広がる。 まるで星屑が散らばっているかのような輝きだが、人間の生を感じるような力強い光。 見ているだけで、人々の息遣いや躍動感、生活感を感じられる光だった。 その美しさに、土方は魅入られた様に見つめ続けた。 土方に促された朔も、そっと顔を上げると首を巡らし、町中の方へ顔を向けると、その美しさに目を見張った。 「…綺麗…」 余りの綺麗さに、朔がそう漏らすと、土方が小さく笑った気配がした。 その気配に朔が土方を見上げると、町中を見つめる土方の目は、どこか嬉しそうに見えた。 「こっからの眺めは最高だろ?京の町の活気が…力強く生きる人間の様がよく分かる。あれが、俺達が守りたい…守ってきたものの一つで…俺達の誇りだ」 どんなに京の町の人々に厭われても、ただ己の誠の為に…己が信じた道の為に尽くしてきた。 その結果が、眼下に広がる美しい景色だった。 眼下に広がる美しい景色は、今まで自分達の歩いてきた、誠の道なのだ。 守るべきものであり、今までの成果であり、誇りなのだ。 土方の目はそう語っていた。 穏やかな慈しむような目差しであり、京の町を誇らしげに見つめる土方の横顔を、綺麗だと朔は思わず見とれた。 朔は新撰組の志が好きだった。 己の信じた道を真っ直ぐに突進む強さが好きだった。
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