549人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
「こいつを新撰組に引き込んだ事を許して欲しい。こいつの側に俺達みたいな血に塗れた人間がいる事は間違ってるんだろうが、俺達はこいつが必要なんだ。だから…こいつの事は何があっても守ると約束する。新撰組副長として、こいつの身は責任を持って預かる」
「土方さん…」
土方がそう言い、頭を上げると、三匹の蛍は淡い光を放ちながら暫く朔と土方の周りを飛んでいたが、やがて名残惜しそうに夜闇へ消えていった。
その消えゆく光を朔は寂しそうに、いつまで見送っていた。
恐らく、送り火も焚かれ、この世から去らねばならない刻限だったのだろう。
「…土方さん…有り難う御座います」
「あ?礼を言われるような事はしちゃいねぇさ」
「いいえ、きっと両親も兄も土方さんの言葉で安心出来たと思います」
朔がそう言い、土方に笑いかけたと同時だった。
庭から沖田の声が聞こえてきた。
「朔さん!土方さんに変な事されてませんか?!」
突如響いた沖田の声に土方は思いっきり不愉快そうに眉根を寄せると、庭に立つ沖田を見下ろした。
「ちっ、面倒な奴が帰ってきやがったな。九条、あいつの事は任せたぞ」
「はい」
さも面倒臭そうに言う土方に朔は思わず笑うと、庭にいる沖田へ声をかけた。
「沖田さん!そんな心配しなくても大丈夫ですよ!今、そちらへ行きますね!約束してた好物のあんみつをお出ししますね!」
朔はそう言うと、屋根の上を四つん這いで這いながら、先程の梯子まで移動をする。
最初のコメントを投稿しよう!