願わくば…

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一輪で咲く梅の花の様に、たとえ、ばらばらになったとしても、私達は私達。 離れていても、進む道を違えたとしても、私達は私達であるという事。 仲間である事は変わらない。 そんな意味に思えたんです。 梅の花は…私達を表してるのかなぁ…って。 まぁ、単純に『一輪でも梅には変わりねぇだろうが』って意味かもしれませんけどね。 そればっかりは本人に聞かなきゃ分かりませんけど、あの人が素直に教えてくれる訳ありませんし。 それに、句集の話をした時点でまともな会話は出来ないでしょうね。 そういう訳で、あの日は道場で正座をさせられてたんですよね。 道場から見える夜桜も見事なもので、月明りを浴びて、輝く様な桜を私は魅入られた様に見つめてました。 何ていうんですかね。 春の夜は…特に桜の舞い散る夜は、何かを狂わせる様な美しさがある気がします。 桜の儚げな美しさや、まどろみたくなる様な心地良い気温。朧気な姿を見せる月に、霞みがかった空。 それらが現実と夢の境を曖昧にしてゆく。 あの日の夜も、私はそんな感覚を覚えました。 今は夢なのか、現実なのか…私という存在さえ幻なのか、現実なのかよく分からなくなった頃に、暖かな風が頬を撫で、私の髪を乱していきました。 風に乗り、ひらひらと舞い散る桜の花びらが私の視界を満たしてゆく。 余りの美しさに私は思わず庭先に降り立ちました。
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