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そして、朔さんと出会いました。
桜の樹の妖かと…幽霊の類かと思いましたが、彼女は生身の人間。
でも、どこか桜を連想させるような人。
良く言えば、儚げで幻想的な存在。
悪く言えば、どこか現実感の無い存在。
ですが、やはり陽の光の下の彼女は紛れもなく、私達と何ら変わりない人間でした。
相変わらず神秘的な雰囲気はありましたが、夜に見た時の様な人外の様な印象はありませんでした。
謎に包まれた存在の彼女。
何故だか、彼女がいずれは遠くへ…桜の樹へと消えてしまいそうな気がしてなりません。
何故って、朔さんに会うまではあんなに美しいと思った桜が、急に普通に見えたんです。
いえ、変らずに美しいですが、魅入られるような輝きは色褪せた気がしました。
やはり彼女は桜が見せる幻なのでしょうか…。
朔さんは桜の一部で、桜から彼女が離れたが為に輝きは…。
そうだとしたら、いずれは彼女は桜へ戻る。
桜が見せる儚い夢だ。
「桜が見せる夢ならば…桜の気紛れがいつまでも続けば良いんですけどね…」
そう。これが桜が見せる夢ならば、桜の気紛れが終われば彼女は消える。
終わらない夢は無いと分かっていますが、終わらなければ良いのに…なんて望んでしまう。
それほどにこの夢は心地が良いんですよ。
あぁ…何を言ってるのか段々分からなくなってきましたね。
桜の花が好きだという話だったのに、気が付けば何の話やら。
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