かけがえのない宝物

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雪の護衛が殺害され、雪自身も所在が不明になった事に関する幹部会議が終わった後、沖田は壬生寺の境内の石段に座り夕暮れの空を見上げていた。 何故だか壬生寺の境内に居ると落ち着く為、沖田は独りになりたい時は必ず壬生寺へとやってきていた。 「長州が動き出しましたか…」 そう呟くと沖田は顔を険しくした。 今まで小競り合いはあった。血も流れた。 だが、今回の雪の事件をきっかけに事態は急激に転がり出すだろう。 穏やかな日々に別れを告げねばならなくなる日は近いと、沖田は本能的に悟った。 「…いつも通りの日常は案外簡単に崩れるものですね」 沖田はそう呟きながら小さく笑った。 いつだってそうだ。 それはある日突然終わりを告げるのだ。 沖田は茜色に染まり出した空を見上げた。 穏やかな日々は崩れても、空だけは変わらない。 人の世で起きる出来事に決して左右されない。 当然の事ではあるが、時としてそれが無性に腹立たしかったり、それに安堵したりする。 だが、沖田は今の自分はどうなのかよく分からなかった。 変わり行く日々とは裏腹に変わらない空を、どう思っているのか。 安堵しているような… 変わらない空を羨む様な… 言葉に出来ない感情が広がっていた。 沖田は暫く無言のまま空を見上げていたが、不意に言葉を紡いだ。 「…で、いい加減出て来たらどうですか?そこに居るのは永倉さんと一君でしょう?」
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