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「あぁ、その事ですか」
永倉達が何を言いたいのか、ようやく理解した沖田は納得した顔を見せた。
永倉達の疑問は当然だ。
実は当人である沖田ですら、内心驚いたくらいなのだから。
あんなにも朔が誰かと親しくするのが不快だったのに、朔の為と思えば、こんなにもあっさり態度を改められた自分に、沖田は笑うしかなかった。
「お前、無理してねぇか?」
「してませんよ」
永倉の言葉に沖田は笑って答えるが、永倉はそんな沖田の反応を疑っているようだ。
確かに、そう思われても仕方が無かった。
沖田は今まで何度も、こうして永倉に嘘を吐いて来たから。
大丈夫じゃないのに、大丈夫と言って笑った。
何度…何でもないと笑って嘘を吐いただろう。
だから永倉は、沖田の『大丈夫』を素直に信じられなくなっていた。
それは沖田も分かっており、肩を竦めながら苦笑した。
「…永倉さんには沢山、大丈夫って嘘吐きましたけど、今回は本当です。嘘じゃなくて、本当に無理なんてしてませんよ」
沖田はそう言うと、斎藤の顔を見上げた。
斎藤のあの一言が沖田の目を覚まさせたのだ。
「一君に諭されて目が覚めたんですよ」
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